二つの質点の話だったが複数の場合はどうか。
三つの場合はそれぞれの座標軸に投影して、X軸、Y軸で考える。こうすれば直線上に並んだ質点の重心として扱える。
まずx1とx3の重心を求める。
Xg13(m1+m3)=m1x1+m3x3、m1+m3≡m13
次ぎにXg13とx2の重心考えると
Xg(m13+m2)=m13Xg13+m2x2
なのだが重心m13Xg13はそのままm1x1+m3x3なので
Xgx(m1+m2+m3)=m1x1+m2x2+m3x3
となる。Y軸も同様に
Xgy(m1+m2+m3)=m1y1+m2y2+m3y3
N個の質点系の場合は
まとめてベクトルrを使うと
これも時間で割れば系全体の運動量は
…(1)
となる。質点miにかかる力の内、系内の他の質点かかる力をFkiとし、それ以外の外からかかる力をFiすればmiの運動方程式は
ただしFiiは自分が自分自身からの力なので0となる。質点系全体にかかる力は総和
ところで右辺の最後の項はFikという力は作用反作用の法則から同じ大きさで向きが逆のFkiという力もある。つまりFik=-Fkiである。そのためこの和は0である。したがって右辺の最後の項は0となり質点系全体にかかる力は外力のみかかり、内部の力は寄与しないことがわかる。これは外力がかからなければ当然
となり、時間で割る前の式(1)はconstとなるので、外力がかからなければ系の運動量は一定に保たれる。このことから分かるように複数個からなる質点系でもその重心にあたかも全質量が一点に集まったひとつの質点の運動と考えてもさしつかえない。
流体もしくは連続的に広がっている時は積分をつかう。
全質量は密度をρ(x,y,z)とすればM≡∫ρ(x,y,z)dV
mixiの部分はxρ(x,y,z)dVである。したがって
Xgx∫ρ(x,y,z)dV=∫xρ(x,y,z)dV
以下同様に
Xgy∫ρ(x,y,z)dV=∫yρ(x,y,z)dV Xgz∫ρ(x,y,z)dV=∫zρ(x,y,z)dV
まとめてベクトルr
Xg∫ρ(x,y,z)dV=∫rρ(x,y,z)dV
これらが収束するかは条件がある。Σmiの項で数が無限大であったり、ρ(x,y,z)が空間全体にまんべんなく広がっていたなら収束しないだろう。広がっていても無限遠で十分早く0になれば有限となる。
高校物理では外場が存在しないとき、運動量が保存するという。外場が存在しないとはどういうことなのか、そもそも運動量が保存するとはどういう意味なのか?
二体衝突問題
衝突前、質点1が質量m1、速度v1、質点2が質量m2、速度v2、が衝突して
衝突後、それぞれの速度がv'1、v'2である時、
が成り立つ。つまりm1の運動量はm1v'1と変化し、m2の運動量はm2v'2と変化した。
この式から質点
から
一方質点m2の運動量の変化は から
となります。上の運動量保存の関係式を
から
が言える。
この運動量の変化 △pはニュートンの第二法則F=maをF=△p/△tとみなし、△p=F△tとみれば運動量の変化は力が働いた時間の積とみれる。
すると△p1=F1△t、同じく△p2=F2△t
-△p1=△p2は△p2+△p1=0となり、F2△t+F1△t=0なので
結局 F2+F1=0となる。
これは質点1に働いた力と質点2に働いた力の合計が0ということ、つまり同じ大きさで向きが逆ということなのでニュートンの第三法則、作用反作用の法則ということになります。運動量保存則とは作用反作用の法則の反映と言え.る。
高校物理では大きさを持たないと定義されているが、大きさを持つとはどういうことから始めるとワケワカメになる。というのは棒のような両端が固定された物体の力学状態を知るにはx,y,z,vx,vy,vzだけでは足りない。棒の位置や速度がわかっても、その棒自体がどのような運動しているかの情報が必要である。ある時刻にどの方向に向いているかはさらに二つの変数が必要で、例えば棒の中心に座標を設けてどの方角なのか測定する必要がある。さらにどのくらいの速度で回っているかの測定も必要。こうなるとやや複雑となる。さらに棒ではなくバネで結ばれた系ではバネの中心に置いた座標では撞径方向の情報も必要となる。
こういうことが問題になるのは系のエネルギーを考えた場合、バネにつながれた系ではエネルギーは運動エネルギーの他に回転エネルギーや振動エネルギーも考慮しなくてはいけないので複雑になる。熱力学ではエネルギー等分配の法則というのがあり、複雑な系ほど熱容量が高くなる。
ここであらためて大きさを持たないとはどういうことなのか考えてみると一つの疑問が生じる。高校数学で極限という概念を習った。
つまりバネでつながれた系を無限に小さくすれば大きさを持たないということになりはしないか。もしそうだとすれば変数の数がいつから6から3になるかが不思議だった。質点とは大きさを持たないという定義に従えばこのような疑問が生じてくる。
ということは定義がおかしいのではないか、大きさを持たないとは描像であってもうすこしまともな言い方が有るはずだ。
そこでこう定義をおこなう。「ある力学系の座標が(x,y,z)のみで記述される場合を質点と呼ぶことにする」つまり内部自由度が存在しない理想的な粒子である。
なぜこのような理想的な系を考えるのは話の出発点としてもっともシンプルな形を取るのは大変意義深いことと思えます。